73号 「お家騒動」

完全版はこちら → 第73号 28年3月号

「日本中が注目!」

日本中が注目するなか、経営困難に陥っているシャープは2月25日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りを決断しました。政府系の産業革新機構の支援案より、世界各国に販路を持つ鴻海傘下の方がより再建できると判断したようで、支援総額は6500億円程です。

鴻海は「シャープ」ブランドを存続させ雇用や事業については原則として維持、米アップルなどの顧客を抱える販路を活用しシャープの強みである液晶パネルなどの業績回復に期待がかかります・・とのニュースが流れましたが・・一転、将来に不安を与える債務が基本合意の直前に鴻海側に伝えられたため契約延期(2/29現在)がなされています。

一方、産業革新機構の志賀会長は記者団に シャープの決定により「案件はクローズする」と撤退表明を行い、いよいよ持ち駒が一つしかなくなりました。不安が的中しない事を願います。

「けんかをやめて~!」

 

「100年企業」であるシャープの今後が注目されますが、数年、数十年しか経過していない中小企業は日々経営危機と戦っています。たとえば販売不振、資材高騰、人材・資金の不足等々、不安材料には事欠きません。

このように、同族会社にとっての経営課題は無数にありますが、同族役員間の不仲や協調不足、意地の張り合いを起因に存続の危機へと発展するといったケースがあります。
江戸時代から「お家騒動」は歌舞伎や狂言の定番となるくらい古くから起こっている組織の危機です。

また、お家騒動は会社の大小に関係無く起こるようで私たちの耳に入って来たニュースとしては「一澤帆布 - 信三郎帆布」の相続争い、「ほっともっと – ほっかほっか亭」の分裂、最近では「大塚家具」、「ロッテ」などの内紛もあります。分裂まで行くケース、訴訟合戦と様々な形態がありますが、いずれにしても企業イメージが毀損されるのは間違いありません。

「社員や取引先は誰を信用している?」

「一澤帆布」のケースでは複数の遺言状が存在し、自分が後継者に指名されたとの訴訟が一時的に認められ京大卒の元銀行員である長男(一切会社に関わっていない)が経営権を握ったものの、三男(業績拡大に尽力)を職人が信頼し全員退社する一方、鞄生地の納入業者である朝日加工は長男との取引を拒否、ランドセルを購入していた同志社小学校は三男が設立した会社から購入すると表明しました。

争いの発端となった遺言状の真偽や裁判の経過はさておいて「社員・仕入先・販売先」の信頼を勝ち取った時点で長男は敗退、三男の勝利が確定しています。

「どうしたら信頼を得られるか!」

お家騒動の一因に、ある影響力のある人物の「自分が自分がという心」を発端に火種が広がる場合があります。

一方、ある知り合いの経営者は思い通りいかない現状を「自分への試練だと考え会社の円満の為に自分が我慢する」と話していました。年長者は若い人の考えを暖かく見守り、若い人は年長者の経験を信頼・尊重する。そういう積み重ねが経営者や従業員間の信頼が生み出されるのかも知れません。

先ほど紹介したいくつかの企業のように自我を貫き通して会社の存続を脅かすのは愚の骨頂です。経営トップは他者から叱られることが少ないので落とし穴に注意です。

毎晩寝る前に鏡で自分の顔を見て今日の出来事を反省するという著名な経営者がいます。その方は一代で年間数兆円の企業を作り上げた経営の神様ですが凡人の私たちには一週間に一度・・ひと月に一度ぐらいは自分の発言や行動を反省して見たいものです。