かわら版:「志」を持つ
2012年9月、全国から600名以上の経営者が集まる勉強会が札幌で開かれ、私も参加しました。発題者の一人は、難病を抱えながら日本一のはんこ屋さんを築き上げた大谷勝彦さんです。
大谷さんは中学校しか卒業していません。母親が営んでいた「3.5坪のはんこ屋さん」を受け継ぎ経営者となりました。直近の平成24年6月決算で売上27億4千万円、経常利益約3億8千万という素晴らしい業績で文句なしの日本一のはんこ屋さんです。
大谷さんが、日本一になるという大きな夢を実現出来たのには理由があります。それは、障がい者が安心して働ける場を作りたいという確固たる「志」を持っていたからです。
自分が難病を患い入退院を繰り返し、何回も死ぬような経験をした大谷さんは「自分が生かされたのは社会の役に立てということだ」、はんこ作りは障がい者でも出来る。少しでも多くの障がい者を雇用したい。そのために「事業を拡大する」と決心したのです。
日本一のはんこ屋さんになるとの夢を実現した現在、大谷さんは新たな「志」を抱いています。障がい者の親は自分が先に亡くなった場合、子どもがどうなるか心配です。その心配を取り除くためには、働きながら安心して生活の出来る施設を作りたい。そう思い、自分の退職金2億円で土地を購入、次なる夢の実現に進んでいます。
稲盛和夫さんは、経営12ヵ条 で「事業の目的、意義を明確にする 。公明正大で大義名分のある高い目的を立てる。」としています。綺麗ごとばかりでは事業は上手くいかないと思う人もいるでしょう。
しかし、「国家産業の発達を図り、社会生活の改善と向上を期す(パナソニック)」、「産業報国の実を挙ぐべし(トヨタ)」、「従業員の物心両面の幸福を追求し(京セラ)」といった、国のため、社会のため、従業員のためといった、一見綺麗ごとじゃないかと思うような理念を掲げている企業が世界有数の企業に成長しているという事実があります。
是非、自社が存続する目的を見つめ直して見てください。