かわら版:「事業の再構築」を考える

 札幌の税理士、佐藤寿志です。

二宮尊徳は、幼少の頃に両親を失い伯父さんに引き取られました。しかし、伯父さんは尊徳が勉強する事を咎めます。

そこで、薪を運ぶ仕事の途中に本を読み、夜は自分で育てた菜の花の油を灯し勉強したと伝えられています。薪を背負いながら本を読んでいる銅像は日本人にとっては勤勉の象徴です。 しかし、尊徳の本当の功績は、リストラ(事業再構築)により数多くの農村や藩財政を立て直した事でしょう。

リストラと聞くと、従業員の解雇、給料の減額、工場を閉鎖、といったネガティブな印象がありますが、本来は企業の現状を見直し、再構築する事です。

尊徳の最初の財政再建先である小田原藩家老の服部家は借金が千数百両にも上り、行き詰まっていました。そこで尊徳は倹約を徹底するという改善策を行ったのです。

たとえば、「鍋底の炭を落として熱効率をあげること、煙が出ないように燃やし、炎をよく鍋底にあたるようにして炊く」といった節約のルールを浸透させ使用人の協力を得て倹約し、その結果生じた余剰金を積み立て、その余剰金を金銭に困っている使用人に無利子で貸し付けました

こうして5年後、服部家の借金は完済され、300両の益金が残りました。

尊徳が行ったリストラの特徴は、農民や藩の家臣「一人一人のやる気を引き出だした」事です。しかし、時には反対勢力から抵抗を受ける事もありました。

ある時は、しばらく連絡不通にし、人々が本当に困ったと思うまで待ちました。そして、尊徳がいなければ事業再建が出来ないと当事者達に理解させたのです。

一人一人の考え方が変わらない限り、全体は変わりません。目先のコストダウンのためのリストラでは、従業員のやる気も失われ、将来の成長性に悪い影響を与える事もあるでしょう。

徹底的な倹約を行い、従業員と思いを共有し、余剰金を積み立て、社内留保を高め体力を回復させる。

尊徳のリストラは現在でも十分通じる方法です。